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2010年10月24日 (日)

true tears 比呂美が乗り越えられなかったもの(ネタバレありです)

 true tearsは成長のストーリーです。だから、登場人物たちはいろんな経験をして成長していきます。時には大きな壁を真実の涙を流して乗り越えていきます。そんな綺麗な物語が描かれていました。

乗り越えていったものを登場人物ごとにあげていけば、
眞一郎:乃絵
乃絵:眞一郎
三代吉・愛子:眞一郎
純:乃絵
比呂美:乃絵

 と言うことになると思います。ただし、比呂美だけは乃絵の一部を乗り越えられなかったのかなと言う感想を私は持ちました。勿論、乗り越えられな いことが作品的にも比呂美的にも悪いことだと私は思いません。むしろ、そのことで素敵な作品になったのではないかと思っております。

 比呂美が乃絵を乗り越えられなかった部分。それはドラマCD比呂美の場合に描かれています。CDドラマのその部分を追っていってみましょう。
 比呂美は眞一郎とバス停(乃絵と眞一郎が別れたバス停)に向かいます。彼女なりに、石動乃絵を乗り越えようとしたのでしょう。でも眞一郎との会話の中で、改めて石動乃絵の強さを感じてしまいます。こんな会話があります。

眞一郎「ああ。ここで乃絵は俺の絵本を見てくれた。それから」
比呂美「松葉杖をついて一人で帰っていった」
眞一郎「ああ。送らなくっていいて。他の誰にもできないと思うよ。あんなこと」
比呂美「そうね。私にはできない」
眞一郎「ああいや。そういう意味じゃ」
比呂美「分かっている。でも私にはできない」
比呂美「だってそんなの悲しすぎるわ」

 その後、比呂美は雷轟丸とじべたの物語を眞一郎が乃絵に見せている情景を語ってみせます。そして、比呂美は
「石動乃絵って他にいないわよね」
 と
「でも私は、私は他にいない?他の誰でもない湯浅比呂美」
の2つの問を発します。
 おそらく、彼女が石動乃絵に抱いていた思いこそが、この2つの台詞に込められていると思います。比呂美はこれらに悩むわけですが、二つめの問への回答は眞一郎の母との会話で答えを見つけます。

眞一郎母「女はね、みんなはずーと昔から繋がってるんじゃないかと思っているのよ」
比呂美「繋がってる?」
眞一郎母「昔から何度も何度も恋をして、何度も何度も涙を流して」
比呂美「変な言い方ですけど、それって連帯感みたいなものですか?」
眞一郎母「こっちの言い方のほうが近いかな、チームプレイ」

 この台詞の意味を私なりに解釈すると、女はみんな繋がっているというのは、昔から何度も何度も恋をして何度も何度も涙を流した経験が、次の女性 への援助として受け継がれる。それがチームプレイだと言う意味なんだと思います。実際13話で眞一郎の母は眞一郎を待つ比呂美にブリ大根を持ってきて「待つのって体力いるのよね」っとねぎらってくれました。比呂美はそれを知って、「他の誰でもない湯浅比呂美」という問に対し、自分はそんなチームプレイの中 にいること自覚し、「他の誰でもない」と言う部分にこだわる必要な無いことに気づいたんだと思うんです。実際に、比呂美は朋与の恋の相談で、自分が他の人 に言ってもらったことを朋与に話します。その結果、朋与は好きな人に告ることができました。
 ところが、比呂美としては、最初の問「石動乃絵って他にいないわよね」はチームプレイだけでは説明できないんです。乃絵が持っている強さはチームプレイだけで得られるものではありません。これはどこから来るのか。比呂美にとって大きな謎だと思うんです。
 比呂美は乃絵を乗り越えようとしたのですが、半分ほどしか乗り越えられなかった。その中途半端な気持ちが、CDドラマの最後の部分に現れているんだと思います。

 「階段ベンチに一人で座っている石動乃絵は3月のまだ肌寒い風を正々堂々正面から受けて、なんだか眩しそうに遠くを見ていた。私もその視線の先 を見たけど青い空と立山の山並みのスカイライン以外何もありそうもなかった。ううん。石動乃絵はまさにそのスカイラインを見ていたのかもしれない。そして 私は黙ってその後ろを通り過ぎた」

 これは乃絵の強さを感じている比呂美と、その強さの理由が分からない比呂美が描かれていると思います。そして、分からないからこそ乃絵に惹かれてしまう比呂美の姿も。
 私としては、これはすごく美しいなと感じてしまいました。うまく言えないのですが、完璧な優等生の比呂美が見せる完璧でない部分と申しますか。人間臭い面と言いますか。
そんな部分が良かったと改めて思いました。

※以上で、私のtrue tearsの振り返りは終わです。また、見たくなったらその時、書くかも知れませんので、その時はよろしくお願いしますm(_ _)m

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コメント

素晴らしい記事でした。すごく納得がいきました。
自分はかなりのttファンでして、もう放送されて7年、そろそろ8年になりますが、昨日今日、久しぶりに全編見ました。そして視聴後いろいろな方の反応を見たくてググっていたら、このブログに出会った、というわけです。
ドラマCDに関して、記事に書かれた部分はとても納得が行きました。そしてそこがttの魅力であるというのも同意できます。

一点、記事に書かれたことを補強するようなつもりで書き添えたいのですが、
最終話、眞一郎が竹林で比呂美を見つけ出したとき、比呂美が眞一郎に対して、絵本を乃絵に見てもらえたか聞き、私も見たかったなぁ、と言います。そして直後、付き合おうと言われるたのに、いや…、いや!、と二回も否定します。
そのあとには抱き締められて、二人の恋人関係成立という綺麗な完結をみるわけですが、この、見たかったなぁという言葉と、いや、という否定の言葉のうちに、眞一郎と乃絵との関係になかなか入っていけない比呂美の苛立ちや悔しさが見出せるような気が私はしています。
竹林にまで来て探し出してくれたのだから、実質もう自分が選ばれたということになるのですが、来てくれてありがとうとか、待っていたとか言わずに、乃絵に見せた絵本を私も見たかったと言うのは、そうした気持ちが背景にないと説明できないし、
ましてや、付き合おうとまで言われて、いや!と否定するのは、単に眞一郎に選ばれればそれで満足なのでなく、どうして乃絵でなく自分なのか、あるいはどうして乃絵を一度は選んだのか、具体的には竹林に来るまでのあいだに乃絵となにを話したのか、そうしたことが知りたい、それを知ってからでないと素直に告白に対して承諾できない、という気持ちがあるからだと思います。
つまり、ただ待つだけの存在でなく、眞一郎と乃絵との関係をちゃんと知った上で告白を承諾したいという気持ち、このブログ記事でいえば、ちゃんと乃絵を乗り越えたい(ないし理解したい)という気持ちです。

実際にはそのシーンは抱き締められて終わりなわけですが、
比呂美の側からの、乃絵に対する、乗り越えたいという気持ち、(逆に乃絵は比呂美を乗り越えたいと思っていなそうで、超然としていますけどね、)
そうした気持ちがあればこその、竹林シーンであり、また、ドラマCDでの(記事に書かれた)比呂美が乃絵の視線を追うシーンだと思います。

(もう少し私の考えを述べさせていただくと、比呂美が乃絵を半分は乗り越えられないという点が魅力だとおっしゃったように、比呂美と乃絵とのあいだでお互いを理解し尽くすことがないという点、あるいはその二人だけでなく、他の登場人物たちも含め、お互いがお互いを理解し尽くすことがなく絶妙な距離を保ち続けている点が、ttの魅力ではないかと思います。)

ともあれ、大変面白い記事を読ませていただき、ありがとうございました。

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